2011年11月24日木曜日

がん細胞を光らせる試薬開発:GGT酵素

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● NHKニュース



NHKニュース 2011年11月24日 4時51分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111124/t10014157751000.html

がん細胞を光らせる試薬開発

 CTなどでは判別が難しい大きさ数ミリのがんを光らせて、ごく短時間で検出できる試薬を、東京大学などの研究グループが開発しました。
 肉眼で確認できないがんを見つけ、取り残しを防ぐ技術につながると期待されています。

 東京大学の浦野泰照教授とアメリカ国立衛生研究所の小林久隆主任研究員らのグループは、がん細胞の表面に多く現れる「GGT」という酵素に注目し、この酵素に触れると化学変化を起こして緑色に光る試薬を開発しました。
 そして、ヒトの卵巣がんを移植したマウスの腹部に試薬を吹きつけたところ、1分ほどで、点在していた1ミリ以下のがんが光りだし、肉眼ではっきりと確認できたということです。

 今のところ、がん細胞を検出できる確率は卵巣がんで3分の2ほどですが、研究グループでは、さらに細胞の性質を調べて確実な検査法にしたいとしています。
 今回利用したGGT酵素は、肺がんや肝臓がん、それに乳がんや脳腫瘍などにも現れるということで、実用化できれば、手術の際に肉眼で確認できないがんを見つけ、取り残しを防ぐ技術につながると期待されています。
 浦野教授は
 「手術中にスプレーして小さいがんをその場で見ることができれば、見落としの問題を克服できる。
 実用化に向け研究を進めたい」
と話しています。




毎日.jp 毎日新聞 2011年11月24日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/science/news/20111124ddm005040087000c.html

がん細胞:スプレーで発光 手術、検査で見落とし防ぐ--東大など試薬開発

 患部にスプレーをかけて、がんだけを明るく光らせる技術を、東京大と米国立衛生研究所のチームが開発し、23日の米医学誌「サイエンス・トランスレーショナル・メディシン」に発表した。
 マウスの実験で確認した。
 手術や検査の際、がんの見落としを防ぐ方法として、臨床応用を目指す。

 チームは、がん細胞で特に働きが強まる酵素を見つけ、その酵素と結びつくと緑色に光る試薬を開発した。
 がんを移植したマウスの腹部を開け、試薬をスプレーしたところ、数十秒~数分後にがんの部分だけが肉眼でも確認できるほど強く光り出した。
 開腹せず内視鏡を使ってスプレーした場合も同じ結果が得られた。

 この酵素は肺がんや肝臓がん、一部の乳がん、大腸がんなどで強く働く。
 正常細胞にもこの酵素は存在するが、がん細胞の方が20倍以上明るく光るため、区別が可能。
 1ミリ以下のがんも光らせることができるという。

 チームの浦野泰照・東京大教授(ケミカルバイオロジー)は
 「使用量はヒトの場合でも1ミリグラム程度と極めて微量で、副作用の心配は少ない
 切除手術中に見落としがないかを確認したり、がんの転移を確認するのに役立てたい」
と話す。




東京大学 平成23年11月24日
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20111124-2/

スプレーするだけでがん細胞が光り出す蛍光試薬を開発
-外科・内視鏡手術における微小がん見落としの問題に大きく貢献-

科学技術振興機構(JST)
東京大学 大学院医学系研究科

 JST 課題達成型基礎研究の一環として、東京大学 大学院医学系研究科の浦野 泰照 教授と米国国立衛生研究所(NIH)の小林 久隆 主任研究員は、外科手術時や内視鏡・腹腔鏡施術時に、がんの存在が疑われる部分にスプレーするだけで、1分前後でがん部位のみを鋭敏に検出できる試薬の開発に成功しました。
 現在、PETやMRIなどの原理に基づくがん診断法が医療現場で利用されていますが、これらの手法では1cm以下の微小がんの検出は困難です。
 しかし、がんの再発を防ぐには、例えば、腹腔内に転移した1mm程度の微小がんを検出し、これを全て取り除くことが非常に重要です。
 現状では、特殊な光学系を採用した内視鏡などを用いて、手術者自身の経験に基づいてくまなく探す以外に方法がなく、微小がん部位の見落としや取り残しが大きな問題となっていました。
 このようにがん手術の臨床現場では、微小がん部位の適確な検出法の確立が強く求められていました。
 今回研究者らは、がん細胞が持つ特殊な酵素活性を鋭敏に検出し、がん部位のみに強い蛍光色を付ける試薬の開発に成功しました。
 この試薬を溶解した水溶液をがんが疑われる部位に少量スプレーするだけで、数十秒~数分程度で手術者の目でも直接確認できるほどの強い蛍光が、がん部位から観察されることを、がんモデル動物を用いた実験で証明しました。
 このような局所散布による、短時間での鋭敏ながん部位可視化技術は、ほかに例のない世界初の技術です。

 本研究成果は、外科手術時や近年実施例が急増している内視鏡・腹腔鏡下施術において、微小がん部位の発見や取り残しを防ぐ画期的な技術として、臨床応用が期待されるものです。
 現在、浦野教授を研究代表者とするJST 研究加速課題において、東京大学医学部附属病院、がん研究会有明病院、NIHと協同して、この蛍光試薬の効果の検証を患者体内から取り出したばかりのがんサンプルを用いて行っています。
本研究成果は、2011年11月23日(米国東部時間)発行の米国の医学科学誌「Science Translational Medicine」に掲載されます。

本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。
戦略的創造研究推進事業 研究加速課題
研究課題名 「光機能性プローブによるin vivo微小がん検出プロジェクト」
研 究 者 浦野 泰照(東京大学 大学院医学系研究科 教授)
研究期間 平成22年1月~平成26年12月
上記研究課題では、モデルマウスでの成果・実績をもとに、開発した有機プローブ分子をヒトのがん診断に臨床応用するための基礎データ(前臨床データ)を収集するとともに、新たな有機プローブ分子の開発を行う研究を加速します。

<<以下 詳細 略>>




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